『矢山式気功法 小周天』矢山利彦

B00009NKBT矢山式気功法 小周天 [DVD]
矢山利彦
クエスト 2003-07-19

 矢山利彦先生による『矢山式気功法 小周天』。武術・武道ではなく、気功のDVDです。
 このDVDを購入したのは、時津賢児先生の『自成武道』に言及があったからです。そこでの時津先生の動きが非常に良く、参考になるかと思って、矢山利彦先生のDVDも手にとってみました。
 パッケージは正直、インチキ臭いです(笑)。
 また、「愛の呼吸」とかスピリチュアル臭のする言い回しが色々あり、苦手な方は苦手でしょう。わたしも好きではありません。
 しかし矢山先生の動きは本物です。購入前にネットで動画を見ましたが、この胴体の動きは相当やり込んでいる人のものだ、と、武術やダンスをやっている人間ならすぐに分かるでしょう。一部のレビューで、「矢山先生ではなく若い女性が演じればもっと売れるのに」というのを見かけましたが、わたしはそうは思いません。いや、マーケティング的には確かにお姉さんがやった方が売れるかもしれませんが(笑)、それであればわたしは買いません。似たような動きをしているようで、まったく違います。オッサンだろうが何だろうが、本物の動きが見たいです。それに矢山先生は清潔感のある優しそうなオジサンで、画面の雰囲気も綺麗な感じで印象は悪くないです。
 自分の「気」についての考えは、「気について」という記事でちょっと書きました。
 気感というのは確かにあるし、気という概念を使うことで上手く説明のできる現象は色々ありますが、それを「宇宙のエネルギー」とかいう必要はない、というのが自分の基本的な考えです。スピリチュアル臭いことは、基本的に信じていない、というか蛇足だと思っています。おそらくは脳内の身体マッピングの特定部位が興奮状態にある、といったようなことかと想像しています。
 そのような考えであっても、気感、さらに、一番分かりやすい手の感覚から誘導して小周天上で感覚を回していく、などといった現象も理解できます。また他人に対し「気」により作用を及ぼすというのも、共感作用というか、人間同士の連動のようなものを使っているのでは、と考えています。気の合う会話をしていると人間の脳波はリズムが揃ってくる、という話を聞いたことがありますし、丁度音楽のリズムを合わせるように、人間には「調子を合わせる」機能があります。人間だけでなく、群れを作るような動物は、結果として「調子が合う」ような能力を皆持っているでしょう。「気」が自分以外に作用するとしたら、こうした連絡を通じて、相手の体に同調作用を生じさせるものの筈です。
 「気」で「飛ばす」、あるいは「病気を治す」ような現象も存在はすると思いますが、あくまで相手が「(無意識に)勝手に自分で飛ぶ」「(相手の身体が)自分で治す」よう、誘導しているだけだと思います。ですから、身体が出来ていない相手や、同調する気持ちが全然ない相手、つまり突然バットで殴りかかって来た相手などを「気」で直接吹っ飛ばす、というようなことは多分ムリでしょう。人間ではなく物質に作用を及ぼす、ということも、ないと思っています。百歩譲って「気」で吹っ飛ばすことが出来たとしても、わたしなら普通に歩いて行って殴ります。その方が簡単ですから。
 脱線しましたが、『矢山式気功法 小周天』について言えば、別段神秘的なものはなく、基本的に体操だと思って良いです。
 体操プラス気感を使った練習がありますが、基本的なもので、練習すれば誰にでも出来ます。武術的な立禅などの訓練をしていれば、すぐにできるでしょう。わたしもすぐできました。
 「愛」とか「許」とかはややウザいですが(笑)、言われているうちになんとなくそういう気持ちにはなります。イメージの持ち方くらいに思って、あまり深く考えないようにしましょう。
 また、上記の通り、わたし自身は物理的実体としての「気」を想定する必要はないと考えていますが、想定するとストンと落ちる、分かりやすい、というなら、そういうつもりでやってみたって悪い訳ではないでしょう。結果として同じことが出来るなら、それで良いと思います。気分というのはとても大事です。
 DVD『矢山式気功法 小周天』の目次は、以下のようになっています。
気、気功とは何ですか?
気の感覚とは?
小周天法とは?
小周天気功法の実践
 (ここまでは説明)
基本功
 腕を前後に振る
六つの呼吸
 愛 許 癒 進化 調和 創造
足をほぐす
 体を縦にゆする
膝をほぐす
 膝をまわす
背中・腰・足の後ろをほぐす
 前かがみで腰・腿の裏をこする
 片足を前に出して腿前面と鼠径部をこする
 足を横に広げ腿内側をこする(つま先天井・水平)
指気功
 指を押し付け胸に押し付ける
 内側に組んで締め付ける
 指を一本ずつ組んで手の甲を合わせて前に突き出す(肩甲骨の間をほぐす)
 掌を外に向けて組み手首をほぐす
 手首を伸ばしつつ腕を下に下げる
 掌を上に向けて横に反らす(伸ばす・縮める的)
立禅
胸と背中をほぐす組運動
柔軟かつ強靭な背骨を作る
 鳥の型 亀の型 龍の型 斜めの動き 熊の型
立ち方
命門
本功法
手に気のボールを作る
気のボールで小周天のルートを開く
気の循環方向の男女差
小周天法(女性タイプ)
 このうち基本功はスワイショウのような運動で、指気功は指を絡ませての体操等です。六つの呼吸は、要するに深呼吸ですが、それぞれの動作が異なり、これも体操だと捉えると分かりやすいです。
 立禅については、少なくとも自分の学んでいる武術的立禅と、内容的には多少違います。武術的立禅にも色々な段階・側面があるので一概に言えませんが、「締める」というか、空間をミチミチっと充実させ、張り詰めて行くような要素は重視せず、最初の膨張感とか漂うような感じだけで立っているようです。これは健康法としての立禅なので、このやり方の方が良いと思います。また、長時間立つ訳でもなく、軽くフワッと立ち、体内を視る、というやり方です。これも健康法としてはとても良いと思います。
 鳥の型、亀の型などの四つの動きは、時津賢児先生がDVDで一部をやられていたもので、これが体操として非常に有効です。胴体力ともよく呼応します。四つの動きだけだと捻る要素がやや足りないのですが、矢山先生はこれに加えて捻る動きを示されていて、よくよく身体のことを分かって構成されています。
 最後に本功法で、小周天を回す方法が説明されます。手でボールを作って、そこから誘導して小周天上を回していくやり方です。
 武術的に言えば、小周天を回すのがそれほど大事だとも思っていないのですが、やってみたところ割と簡単に出来ました。武術的訓練の一環として立禅をある程度やっていれば、多分誰でも簡単に出来ると思います。今まで小周天がどうたらという話は聞いたことしかなかったのですが、なるほどこういうことか、と思いました。ただ、習熟するにはよくよく練習しないといけないと思いますし、健康法ではなく武術ということでは、これが出来たからといってすぐに何ということもないでしょう。
 また、聞いた話なのであやふやですが、イメージで意識的に回していくやり方はあまり良くない、とも言います。「勝手に回る」のが一番良いようです。
 立禅にも色々やり方がありますし、立禅以外の練習と合わせた全体としての稽古体系にも色々ありますが、武術的に役立つ立禅のやり方を追求していると、時に「固くなってしまう」危険があるかと思います。圧縮していくというか、空間をミチミチぎっしり詰まらせていって、遊びをなくしていく、というやり方です。この方法はとても大切で、実際の組手に生きる立禅をするためには必須だと思いますが、ここだけ意識していると、固くなったり偏りが出来たり、ということがあり得ます。それを補完する意味で、スワイショウや、気功体操などの柔らかい動きを取り入れるのは有効かと思っています。
 ただ、これも微妙なところで、元々フルコンなどの格闘技的練習をやっていた上で、(立禅を補完するようなタイプの)体操をする、というのは良いと思いますし、特に胴体力やスワイショウ、気功体操などの柔らかい動きは意味があると思いますが、最初からこういう柔らかい系・脱力系だけやっていて強くなるかというと、一部の例外を除いて非常に難しいのでは、と思います。
 大分以前から、やたら脱力だの何だのばかり強調する向きがありますが、こういうのはある段階の人々にとっては有効かもしれませんが、まったくの白紙の状態の人が、そういうところばかり気にしていても、武術・武道的にはなかなか成長しないでしょう。順番の問題かもしれませんが、個人的には、最初は多少固くて無理やりでもいいから、締めてガツンといくやり方を学んだ方が早いのでは、と思っています。もちろん、未熟者の半端な考えですから、大局から見たらそれではイケナイのかもしれません。自分自身や周囲を見て感じる、あくまで個人的な感想です。
 まぁ何でもバランスなんでしょうね・・。

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