島田道男×板垣恵介対談 月刊『秘伝』

 月刊『秘伝』の2006年12月号から2007年2月号の3号に分けて、太氣拳気功会の島田道男先生と、「刃牙」で有名な板垣恵介先生の対談が掲載されています。
 ボクシングで国体出場経験もある板垣恵介氏が、島田道男先生に挑んでボコボコにされた話は結構有名です。以前に紹介した『板垣恵介の格闘士烈伝』という著書の中で、「S先生」という名前でその模様を語られています。
 その二人が二十年ぶりに再会し、語り合う、という企画で、興味津々で『秘伝』バックナンバーを購入してみました。

B000JUBJO2 月刊 秘伝 2006年 12月号 [雑誌]
ビーエービージャパン 2006-11-14

 『秘伝』2006年12月号収録分では、主に『格闘士烈伝』で記されている板垣恵介氏の対戦が話題になっています。おおよその流れは『格闘士烈伝』に書いてある通りで、会話も板垣氏がメインです。時々島田先生が振り返るコメントがありますが、板垣氏に比べて島田先生は大雑把というか、あんまり覚えていないようです。
 その他、個人的に気になったところなどを抜書きしてみます。

――そのあたりの記憶は?
島田 覚えてないけど、まあ何をしたいのかって感じで見るから、どっかでやりたいって気持ちはちょっとはあるんじゃないのか。

島田 繊細だよねえ、話聞いてると。我々何も考えてないから。

島田 (・・・)やっつける時は平手でバシャーン!とやってるわけだから。首の横から後ろあたりをバサーン!とやって倒す。首の方が簡単ですよ。
――それは太気拳をやる前から?
島田 太気でしょ。……太気ってないんだよ、何も。太気って何もない。
――何もない?
島田 決まりがないってこと。

B000LE0S84 月刊 秘伝 2007年 01月号 [雑誌]
ビーエービージャパン 2006-12-14

 『秘伝』2007年1月号収録分では、有名な太気拳極真対抗戦のことや、島田先生の来歴などが話題になります。こちらでは島田先生がもう少しお話になり、技術的な要素も出てきます。

――極真との交流試合は?
島田 前日に首を痛めていてそれどころじゃなかった。ホントやりたくないっちゃ、やりたくなかったですよね。組手中に右手甲も骨折しているし。普段ならあんな組手しないだろって組手しちゃったから。
(・・・)
島田 今は、澤井先生と盧山先輩のおかげで極真の選手と交流できて感謝している。当時はそんなこと考えてないんだから。そん時は首が痛いってだけ。そういう……何も考えてないんだよ、俺(笑)。

島田 誰にも負けないってものがなかった時に、たとえば組手で勝つとか負けるとか、組手で手が入ったとか入んないとか、そんなものは非常にあいまいなものであって、それにとらわれるとわかんなくなるわけです。街で喧嘩するのと、ここの5~6人全員組手するのとでは、全く別なわけですよ。
 逆に夢うつつでやってきたからこそ、そういうのが見えてきてるわけで、闘うってことと、組手とはまったく別! 本当に別なんだよ。種類違うから。だから、やっつけるとなったら関係ないんだ! 方向とか、こう受けてとか、そんなこと考えない。やっつけましょうっていう世界だから(笑)。その違いがわかんない武術は難しいですよ。それをどうやって教えるか?みたいなところがあるから。

島田 (・・・)板垣さんの”制空圏”ってイメージの方が正しいんですよ、近い。人間がいて、その周りにモワッとしたものがあったら、そういう状態になってさえいれば、じゅうぶんなわけだから。そういう状態を作るような練習だから。
板垣 島田さんよく言いますよね、「空間」って……。
島田 体にまとわりつくような、たとえば王向斎でも自分で重くなったとか、ひとつになったとかいう言い方は、ひとつ、なんかあるんですよ。ひとつにパッとまとまったとか。それが重要であって。まとまらない話は……それが常に力を感じるようなまとまり方ってあるんですよ。それさえ維持できてれば問題ないですよね。その時に外的な状況もあるわけですけれど。
(・・・)
それは得体のしれない空間というものが動き出すわけですよ、我々の中で。なんと言ったらいいか分からないけど。仮にゲル状のものであるとするとね、それを揺らしながら動かすわけです。
(・・・)
それをどんどん動かしながら、核を作りながら。そうするとバン!と回りながらバーン!て、それだけで技になっていくわけですよ、どんどん。
 ただ、そういう状態になったからといって、強いか?ったら、それもまた違うんだよね。さらに闘いの中で練り上げる動きじゃなければいけない。
(・・・)
制空圏でしたっけ? イメージは正しい。その中に核があるわけですよ。核がないとそれが機能しないわけで。弱いヤツは核がないから、フニャフニャして、なんかうまそうな感触で形だけはやってるけど。力がそこにない。

島田 闘いっていうよりも、二つがあって”均衡”してるわけです。いろんな意味で僕らは。均衡のない立ち会いって意味がないんですよ。だけどあなたが闘う人間で、僕が闘う人間で、ちょうど均衡の取れる状態がもしあるとするなら、あなたが動けば、僕はもっと違う動きをするわけですよ。それは止まるということはありえないんですよね。
 常にその均衡がどう流動的に動いているか。そういう感覚だから。それ以外のレベルはまだ(笑)。要するに均衡なんですよ。闘いっていうのは均衡なんです。常に調和が取れてるわけですね。それが時間の中で”ピタッと動かない”ってことはありえない。だから剣で構えて見合って、というのは僕の考えでは嘘、ありえない。刀だけはすごいと思うけど。

島田 ていうか歩っていうのは、止まれるかどうかってこと。止まれない動きでしょう? ほとんどが。ステップでは。
板垣 はい。
島田 止まれないってことは、変化できないってことですよ。止まるってことは変化できるってことなんですよ、要は。止まらないでダン!って一瞬で方向を変えながら移動するってことは、そうそうできないんdねす。止まるってことはh事情に重要な体の使い方で。ゆっくりした動きというのは、そこに非常にいろんな要素がある。
板垣 ボクシングには絶対ない動きだよね。
島田 ボクシングの場合、腰を切って打つんですよ。そりゃ体死んじゃうわけだから。単なる惰性の動きでしょう?
板垣 腰を回転させてはいけないと。
島田 させたら終わりですよね。ストレートで言えばね。極端に言えば、イメージ的には、中の、胴から腰のあたりは動かないんだ。まず中で(変化させる)

B000M5KAW6 月刊 秘伝 2007年 02月号 [雑誌]
ビーエービージャパン 2007-01-13

 『秘伝』2007年2月号収録分では、「強さとは何か」という話題、「武術オタク」と大沢昇さんの話題、この取材の少し前にあったらしい島田先生が殴られた事件などについて触れられています。また、板垣先生が島田先生の指導で立禅に初挑戦、といった写真もあります。

島田 (・・・)要するに、やさしさと強さってすごい裏腹なんです。僕にとっては。裏と表くらいベタッとくっついたくらい。
(・・・)
島田 (・・・)強さって”やさしさ”がないと成り立たない。バランスとしてね。強さだけだったら、それは滅びていく。だいたい十年も保たない、そういう感じしますね。(・・・)
 うちの弟子でも強さ求めて、強さだけってヤツは、だいたいすぐ辞めちゃうから。すぐ消えていくんです、そういうの。不思議ですよね。やさしいヤツはちゃんと残って強さを獲得していく。やさしさの中にしか強さがないって、「呼吸」が同じなんですよ。やさしい気持ちとか素直な気持ちになって、呼吸がそれに合って、禅組んだ時も、スッと落ちるわけですよ。素直なきもちにならないと、結局呼吸が納まらない。収まったところで初めてできる。だからやさしさから入って、荘厳なきもちであったり、さらには山のような大きな気持ちになって、ていうストーリーがあるんです。そのストーリーを間違えてしまうとバラバラになってしまう、体っていうのは。最終的には山を超えるくらいの大きな気持ちで、猛々しく闘争していく。でもその気持ちはやさしさから入っていくんです。そういう体をまとめることで、力を発揮するっていう、そういう風に体というのはできてる、と。非常に繊細じゃないと強くなれないし、呼吸も下に落ちるっていうのは、やさしさがあって素直な気持ちになると、形がピチッと決まるんですよ。

 全体として、島田先生は長嶋茂雄タイプというか、「ビュッと入ってバーンとやるんだ!」みたいなしゃべり方をされる方なので、文字の起こすと何がなんだかサッパリ分からない部分もあるのですが(笑)、これに対して板垣先生が冷静にツッコんでいたりして、イイ感じに会話が成り立っています。かなりレアものですし、武術を稽古されている方だけでなく、単に格闘技ファン的に眺めていらっしゃる方にとっても興味を惹かれる内容だと思います。
 ちなみに、この月刊『秘伝』の2006年12月号から2007年2月号の間では、同じ太氣拳では天野敏先生の『組手再入門』が丁度連載中です。以前にご紹介しました通り、これは非常に素晴らしい一冊なのですが、連載中とは微妙に違う箇所もあり、興味深かったです。
 また2007年2月号では、中道会の鹿志村英雄先生のインタビュー記事が掲載されています。鹿志村先生はあまりメディア等に露出されない方ですが、島田道男先生、天野敏先生、佐藤聖二先生らと恒例の交流会を開催されています(この四人の対談記事については『フルコンタクトKARATE』2006年10月号についてのエントリで書いています)。人格・実力共に素晴らしい方と噂を伺います。
 インタビュー記事の中では、神宮時代の貴重なお話などが語られているのですが、その中では上の交流の深い兄弟弟子のことだけでなく、佐藤嘉道先生、岩間統正先生、高木康嗣先生、内村匡人先生のお名前も登場しており、とても面白く読めました。若き日の集合写真の中には久保勇人先生の姿も見られます。
 その他、個人的に興味を持ったものとしては、2007年2月号にはジークンドーのテッド・ウォン師の来日セミナー記事、ボクシングの輪島功一さんの記事などがありました。