『格闘空手 武道に生きる』倉本成春

 倉本成春先生の空手修行半生記です。
 技術書ではないのですが、読み物として面白いですし、倉本先生の謙虚で実直な人柄が伝わってきます。本当に倉本先生は凄い方なのに、書籍でも映像でも腰が低く、ユーモアもあり、とても尊敬できる方だと思います。「最強」という言葉を好まないのも素敵です。

 だから「空手を習いなさい」と言うつもりはない。空手をしてきた私自身、「空手最強論者」ではない。空手であれ、柔道であれ、あるいはレスリング、キックボクシングであれどんな武道、格闘技であっても強い人は強い。格闘技のジャンル自体に絶対的なものがあるのではなく、そのジャンルを極めるなかで、その人が体得したものが強いものとして光り輝くのである。「何が強い」のでは、決してない。

 既に門下を離れた者として実名を出さずに語っておられるのですが、中村先生の元での修行時代の話も、面白いです。
 例の鬼の部位鍛錬について、こんな下りがあります。

 「どうだね、痛いかね?」と先生が聞かれたので率直に「はい、痛いです」と答えた。「そう。では、あと千回打ちなさい」と命じられた。打つ気力はすべて使い果たしていたが、先生の命令である。できないとも言えず、「どうにでもなれ」の心境でただ打ちまくった。その日、手がパンパンに腫れ上がり、箸を持つことすらできなかった。指の感覚が麻痺している。自分の指をコントロールできないので、服のボタンも締められない。正直、先生が鬼のように思えた。が、翌日、先生は何事もなかったかのように、「砂袋を打ちなさい」と告げられる。

 オソロシイ稽古ですね・・。
 ユーモアのある場面もあります。
 公園で松の木を打って稽古して、一ヶ月くらい打つと木がボロボロになると他の木を打つ、ということをやっていたそうですが、ある日見てみるとボロボロの木に藁が巻いてあります。誰かが打ちやすいように親切で巻いてくれたのかと思って打っていたら、公園の管理人さんが「公園の木を傷つけているのは君か!」と怒鳴りこんできた、とのこと。これは笑いました。
 また、盧山先生の道場開きで演武する際、煉瓦と土管を手で持って新幹線に乗ってかけつけたのですが、かなり異様な風景で、「どうして他の運搬手段を使わなかったのか今でも不思議」というのも素敵です。演武よりも土管の運搬が大変だったそうです。
 見た目からしてあんなに強そうなのに、こんな可愛い一面があるなんて、倉本先生は女性にもモテそうですよね。

4434040987格闘空手 武道に生きる
倉本 成春
文武研 2004-02

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする