『実戦中国拳法 太氣拳』澤井健一

 澤井健一先生ご自身による太氣拳の解説本。
 開いてみて意外だったのですが、分解写真などを用いたスタンダードな武道技術書の構成です。澤井先生の本ということで、てっきり観念的な部分や意念などが強調されたものかと思っていたのですが、構成的には至って普通の武道書です。「上段突き」などのもの凄い普通の技法も示されています。
 太氣拳・意拳に関する本は、立禅などの鍛錬法を解説したものが多く、空手の技術書のような技法解説は多くありません。そういう意味でも貴重な一冊と言えるでしょう。
 ただ、最終型としての技法だけに注目すると、別に太氣拳だけが特別な訳ではありません。他の武道でも似たような要素は色々あります。そして多くの場合、「それが出来るなら苦労しないよ」というもので、つまりはこれを可能にする太氣拳の鍛錬システムこそが、やはり一番重要なのではないかと思います。
 その鍛錬システムについても、分解写真で丁寧に解説されていますが、文章による説明はそれほど親切ではありません。澤井先生ご自身が、感覚で語るタイプの方だったのでしょう。
 構成は以下の通り。
太気拳の歴史
形意拳について
太気拳の特徴

 立禅・半禅
 揺
 気を入れる


 迎手
 払手
 差手
 打拳
稽古方法
組手
探手
逆手
 稽古方法では、推手のような訓練法や、腕を打ち付け合う排打功のような稽古、例の竹刀や袋竹刀を使った練習方法が紹介されています。
 逆手は非常に貴重です。「自分から攻撃を目的としてねじったり関節をとったりする逆技ではない」とし、「相手が腕をねらったり、逆をとろうとするのをすばやく逃れるための、すなわち相手から離れるための方法」とされています。
 この逆手について海老が何かに触れて「ぴっ」と丸くなり逃れるかのように一瞬にして離れるものでならなければならない、という比喩があります。
 以下、その他の気になったポイントをいくつか抜き書きしておきます。
 揺について。

 禅を組めば身も心も自然に静にもどる。しかし、禅が終わってすぐに飛んだり跳ねたりしたのでは何にもならない。禅の気分を大切にしながら静から動へと移行していくことが肝要である。揺はこの意味において動への魁となる最初の動作であるから、特に気分を入れて大事に行う必要がある。

 気を入れることについて。

 気を入れる場合、自分の息を一気に飲み込み、力と精神を集中して気を入れるのであり、大声を出して息を外に出す気合とは違っている。

 この後、「吹矢を射るように打つ」という有名な比喩があります。
 這について。

あたかもコサック・ダンスを踊る人のように、ねばり腰で、方向自在な足が必要である。

後退しながらも前に出る気分を忘れないようにする。

4817060026 実戦中国拳法 太氣拳
澤井 健一
日貿出版社 2007-11

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする