『背筋は伸ばすな ― 姿勢のメカニズムとその治し方』

 歯科医師の著者による「姿勢」本。
 何度も言っていますが、わたしはこの点の「姿勢」話、「噛み合わせ」や「骨盤の歪み」系の話は、常に話半分で聞くようにしています。途中までは説得的なのに、どんどん理論がふくれあがって、一つ治せば万病治る、みたいな話がよくあるからです。
 そういう意味で、本書もちょっと離れてツッコミながら読んだのですが、当初予想していたよりはずっと面白かったです。
 最終的に重要になるのが舌のポジションなのですが、そこまで至るまでの過程で示される姿勢や身体操作についての知見が参考になります。
 『左重心で運動能力は劇的に上がる!』でも取り上げられているカンペルライン、つまり鼻の頭と耳が水平になる、やや顔を持ち上げたような角度の重要性も指摘されています。
 舌ポジションについても、今まで考えたこともなかったので、非常に興味深いです。正しい舌の場所とは、上顎に舌をつけている状態です。舌を上あごに吸いつけて「ポンッ」と鳴らす、あの音が鳴る直前の場所です。この状態で鼻をつまんで息が出来なくなっていれば正解です。こちらのページが画像つきで分かりやすいです。
 また、ものを飲み込む時も、「口を閉じ、歯を噛み合わせ、舌を上顎につけたまま飲み込む」必要があります。
 このポジションに舌を置いて上顎を支えることで、カンペルラインがキープされ、姿勢が正されます。
 舌のポジションを矯正するグッズもあります。
 わたし自身、飲み込み方については全然「正しく」ありませんでした。これから気をつけようと思い、練習しています。
 舌ポジションも心もとないのですが、確かに鼻呼吸を助け頭の角度を修正する効果はあります。子供の頃口呼吸で、後になって直したのですが、寝ている時などに時々舌が落ちている感じがするので、注意したいです。注意して直るものか分かりませんが・・。
 非常に面白かったのが、わたしたちが「伝統的な日本人の座り方」だと思っている正座が、江戸中期に始まった一部階級の座り方に過ぎない、という指摘です。そもそも農村は茅葺屋根で、雨漏りがするため畳は使えません。正座することもありません。
 儒学精神の導入と平和な時代に確立された武士のライフスタイルが、いかにも日本古来からのスタイルのように明治政府により喧伝された結果、「正座が伝統」という通念が作り上げられた、というのです。
 この辺の歴史的考証については分かりませんが、「伝統」だと思われていることが、意外と短い歴史しか持っていない、というのはよくあることです。こと武道・武術の世界では「昔からあるのものが正しい」とするぼんやりとした傾向がありますが、その考え自体も微妙なら、本当に昔からあったのかも怪しいことが多い、ということを忘れないように必要があるでしょう。

4990530608背筋は伸ばすな ― 姿勢のメカニズムとその治し方 ― (第二版改訂版)
山下 久明
にしきデンタルオフィス 2010-09-07

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