『武道的身体のつくり方 身体革命を読み解く』木村文哉

 これは武道・武術オタクのツボをグリグリに突きまくった一冊です。
 「フルコンタクトKARATE」「武術」の福昌堂に在籍していた著者が、様々な身体操作・身体トレーニングを取材・体験していく内容です。
 取り上げられているのがヨガの火の呼吸(小山一夫)、太気拳・意拳(盧山初雄)、伊藤昇先生の胴体力トレーニング、肥田式強健術、柳川昌弘先生の二聖二天流柔術憲法、ナンバ・常歩・二軸(小山田良治)と、武術や身体操作に興味のある人間なら一度は注目するメソッドの目白押しです。高岡英夫、甲野善紀両氏についても言及があります(これらについては直接取材なし)。さらに戦う編集長・山田英司氏の名前も登場するなど、武道・武術オタクの脳内を映しだしたかのような百花繚乱ぶりです。
 著者自身も、八極拳を短期間学んだ後、キックボクシング・ムエタイに取り組む、という、来歴を経ています。福昌堂におられたとのこと、山田編集長の影響が多いにあったことでしょう。福昌堂の人々は「格闘技派」と「神秘派」に分かれているとのことですが、「格闘技派」の山田英司氏がどんな神秘派・伝統派より伝統武術に造詣が深い、というのも面白いです。山田英司氏はそういう物凄い人物です。
 内容の方ですが、さすがにこれだけのメソッドを一つの本の中に押し込めているので、一つ一つについてそれほど詳しい紹介がある訳ではありません。それでも、単なる概略紹介にとどまらず、一つ二つ具体的なトレーニング方法が取り上げられています。
 また、著者自身の武道・格闘技経験から来る解釈や印象、実際にやってみた効果が綴られているのも、注目されます。特に胴体力については、半年間トレーニングし、その効果や感覚について触れられています。飛龍会HPでも関連書籍の一つに取り上げられていますし、胴体力トレーニングに興味を持っている人は手元に置いておいて損はないでしょう。「内転筋を使う」トレーニングで骨盤が細分化され、蹴りが見違えるように変わったエピソードがあります。
 いくつかのメソッドについては、その中でも代表的人物・流派などがわかれているものがありますが、さすがにそこまで幅広くはカバーしていません。意拳・太気拳で取材されているのは盧山初雄先生ですし、胴体力も飛龍会、常歩も小山田先生のみでした。個人的には木寺先生にも取材して欲しかったです。
 常歩については、「前に出る腕が内旋、後ろに引く腕が外旋」という点が興味深いです。この場合は、脚を踏み出すのと反対側の上腕を外旋させる、ということです(空手の正拳突きのような状態)。蹴りでも軸足側の上腕を外旋、蹴り足側の上腕を内旋することでパフォーマンスが上がる例が示されています。
 その他、最後の章では佐藤義昭氏の加圧トレーニング、ケビン山崎氏のトータルワークアウト、小山裕史氏の初動負荷理論と、やや現代的なトレーニングも紹介されています。
 ちなみに木村文哉は、ムック『格闘ボディのつくり方』、柳川昌弘先生の『空手の理』紹介記事)編集に携わった人物です。

4309268676 武道的身体のつくり方 身体革命を読み解く
木村 文哉
河出書房新社 2005-12-08