『一流選手の動きはなぜ美しいのか』小田伸午

 常歩トリオ?の一人、小田伸午先生の著書です。
 常歩や二軸だけをテーマにしたものではなく、多様なトピックスを扱っていますが、常歩的身体操作についても触れられています。
 冒頭で扱われている「主観と客観のズレ」という問題は、武道・スポーツにおける身体操作とその教授・学習法を考える上で、非常に重要だと思います。特に、子供の頃からゴリゴリにスポーツをやっていた訳ではなく、むしろ運動オンチで頭でっかちな(わたしのような)タイプの人間が武道・スポーツに取り組む時は大切です。というのも、そういうタイプの人間は、つい客観的に分析し、それをそのまま実行しようとしてしまうからです。
 動きの出来ている人の言う言葉は、主観的イメージから出るもので、これを文字通りに実行したら正しい動作になる、とは限りません。ですから、客観的な分析は必要なのですが、この分析結果をそのまま受け取っても、やはり上手くいかないことが多いです。自分の中の主観イメージとは異なるからです。
 つまり、「主観→客観→主観」というプロセスを経て、最終的に自分の中に落とし込まないといけないのです。
 元々運動センスのある人というのは、あまり説明の上手くない指導者についても、その主観バイアスかかりまくりの言葉をうまく自分の中に落とし込めるのでしょう。一方、センスがない人間けれど分析力のある人間は、「主観→客観」まではやるのですが、そこで止まってしまいます。良い指導者というのは、受けての主観イメージを読み取り、それに合わせた適当なアドバイスが出せる人なのでしょう。
 第二章「筋力に対する誤解」では、いわゆる膝の抜きを使った外力による身体操作が扱われています。武術系の人間には言わずもがなの話ではありますが、実践するのは簡単ではありません。
 ここでは足首の外反屈曲・内反屈曲の問題が面白かったです。わたしは膝下外旋の傾向があるため、特にこれには気をつけないといけないです。足指で掴む意識を持ちながら屈曲しないといけません。これは気をつけて練習していますが、室内で足半を履く、というのも有効だと思います。わたしは最近始めました。
 この章のコラムで「筋力と金力は似ている」というものがあるのですが、とても面白いです。著者の母の「お金は必要な時に必要なだけあればいい」という言葉が紹介されていますが、筋力も同様で、どちらについても胸に刻んでおきたい名言です。
 第三章「手足、体幹の使い方」では、肩と股関節の外旋・内旋、小山田良治氏の『左重心で運動能力は劇的に上がる!』で解説されている身体における左右差などが扱われています。最後に股関節外旋トレーニングが紹介されていますが、これについては『常歩式スポーツ上達法』の方が詳しいです。
 第四章「走り方を考える」では、常歩・二軸的な身体操作が扱われます。その前に「前傾誘導効果」というものが取り上げられているのですが、これは初耳で興味深かったです。坂道状の場所にしばらく立った後平地に戻ると、そのまま前傾が保たれる、というものです。この時、足首の角度は平地用の戻るのに、上半身の前傾が保たれる、というのが面白いです。
 また、カンペルライン(耳と鼻先を水平にするフェイス角度)も扱われています。
 取り上げているテーマが多岐に渡るので、一つ一つについては深く掘り下げられている訳ではありませんが、これを入り口に色々な書籍にあたってみると、より理解が深まると思います。

4047035025一流選手の動きはなぜ美しいのか からだの動きを科学する (角川選書)
小田 伸午
角川学芸出版 2012-02-24

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