『発勁の科学』吉丸慶雪

 懐かしいですね。吉丸慶雪氏の『発勁の科学』。『合気、その論理と実際』と併せて、最初に読んだ時は結構なインパクトを受けたのですが、冷静に考えるとちょっと怪しげなところも多いです。
 この手の「伝統系」武術書・理論書によくあることとして、確かに一点の真理があり、鋭いところを突いてもいるのですが、ものごとを単純化し過ぎており、一つのシンプルな理論の元に何もかも強引にまとめようとするものだから、結局周転円を重ねるような蒙昧があります。せっかくイイことも言っているのに、それが世紀の大発見で、この「真理」の元に合気も発勁も百歩神拳もすべて説明できるのだッ!的になってしまうと、何が何やら分からなくなってきます。神秘系の武術家には、そういう方がまま見られますよね・・。
 なんというか、縦列駐車がメチャクチャ上手で、誰でも簡単に縦列駐車ができるメソッドを開発したとしたら、それはもちろん素晴らしいことですが、だからといって車の運転すべてをマスターした訳ではないですし、レーサーになれる訳でもないでしょう。いくら縦列駐車が超人的に上手くて、その過程で車両操作の重要なツボを抑えていたとしても、車にはもっと果てしない世界があり、レースで勝てるわけでもないのです。
 本書で取り上げられている脱力・伸筋系の動作、射出、といったポイントは確かに大切ですが、「大発見!」という程の話ではないですし、これを文字通りにとって伸筋系のトレーニングだけした方が強くなる!と思い込んだら悲劇です。
 色々ヒントになる部分があるのは事実なので、そういう所だけ要領よく盗んで、あとは適当に聞き流したら良いと思います。
 わたしが持っているのは旧版の『発勁の科学』ですが、今は以下の新版が出ているようです。

4583036841発勁の科学―強打・長打の秘密を解く!
吉丸 慶雪
ベースボールマガジン社 2002-02

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